長男の「個性」

前回の続き。

 長男が幼稚園年中さん当時、担任の先生がとても親身になってくれた。
 長男は独り遊びが多く、折角他の子が遊びに誘ってくれて、よしんば仲間に入ったとしても、物凄ーく『反応が薄い』。フルーツバスケットという遊びでも超醒めてて、皆が「わぁ~!!」って席取りにかけ回っている中、空いた隣の席にそっとお尻をずらす。

 そして、毎朝恒例「何故幼稚園に行かなければならないのか」の禅問答・・・。

 ある日の夕方、園へのお迎えに行った時(当時朝だけ園バス利用)、先生が真顔で

「(長男)くん、朝、靴を履き替えるときに、いつも暫く昇降口で倒れてるんですよ。声かけると起き上がって上履きを履くんですが・・・」

「朝ごはん、ちゃんと食べてますか?」

 今思えばネグレクトも半分疑われてたりして(ブルブル←今となっては笑い話)。

 他の子よりも面談回数を特別に増やしてくれたり、連絡帳も大容量の特別仕様にしてくれたり、今思い返しても有難い気持ちでいっぱいだ。

 

 月日は流れ、大きな不安と小さな期待を抱きつつ、いよいよ長男も小学校に入学。

 1年生の担任の先生も、ベテランで本当にきめ細かく対応してくださった(大感謝)。何故か長男のクラスは、いわゆる『育てにくい子』密度が高く、先生のご苦労は筆舌に尽し難いものだったに違いない。1学期の時点で、既に『学級崩壊状態』。多動児が少なくとも2~3名、長男は多動はないものの、朝の健康視診で名前を呼ばれても無反応。授業も我関せず。2学期からの連絡帳は、読んでも全く意味不明で毎日のように担任の先生に電話して確認しなければならず。

 この時点で、私もようやく『積極的な治療への介入』が必要だと観念した。これまでも県の教育センターに相談に行ったりしてはいたが、「薬は飲ませたくない」という思いが強く、医療機関までは足を踏み入れられなかった。だが、背に腹は変えられない。

 専門医を受診し、今までの経過を説明すると、「薬を使うのに十分値するレベル」との診断。それでもやはり迷ってしまった私。結局、薬を使う決心がついたら再診、ということに。

 やがて長男も2年生に。今度の先生は『中央値のやや上』重視タイプ。程なく『ことばの教室』へのお誘いが。それ自体は私は全く抵抗がなく、むしろ本人がリラックスして授業を受けられる環境なら、と、早速翌日から国語と算数の2教科だけ教室移動となる。

 思いがけず、同じクラスで同時に移動するお仲間、K君の存在が明らかに。分類的には、長男は『のび太タイプ』、K君は『ジャイアンタイプ』。お互いシンパシーを感じ、惹かれあう二人であったが、その仕従関係は次第に明確に・・・。ついに「K君と一緒だとやだな」の言葉が長男から頻繁に聞かれるようになった。

 とうとう母さんが立ち上がる日が来た。

 専門医に電話。1ヶ月待ちで予約(そんなに需要があるのか!!)。

 勿論、事前に私から長男へじっくりインフォームドコンセントを行った。

(私)「(長男)くんは、ことばの教室で勉強するのと、普通の教室でやるのでは、どっちが落ち着いてできる?」

(長男)「んー、ことばの教室かな」

(私)「じゃあ、K君と一緒にことばの教室にいるのと、他の皆と一緒にいるのではどっちがいい?」

(長男)「うーん、K君と一緒は嫌だ」

(私)「もしもお薬を飲んで、普通の教室に戻れるなら、頑張って飲んでみる?」

(長男)「うん、飲んでみる!!」

  そして1学期の終わりに受診。

 「やっぱりお薬をお願いしたいと思います。」どうせやるならとことんやってやる(握り拳)。

 長男にはストラテラが処方された。徐々に増量して、有効量に達するまで1ヶ月以上かかるヤツ。夫は内心投薬の必要性を納得していない様子だったし、増量の過程も複雑なため、夏休み中かけて維持量まで持っていった。 

 紆余曲折のその過程は割愛するが、めでたく維持量で新学期を迎えると同時に一般クラスへ。ストラテラは長男にジャストミートだったらしく、我々家族的には目覚ましい躍進!!と自画自賛。心配された副作用(主に頭痛)の頻度も僅かで、なんとか続けられそう。

 いつも一緒に教室移動が当然と信じきっていたK君の淋しげな表情が印象的だった、と担任の先生・談。

 主治医の先生曰く、「お薬はあくまでも補助的なもの。飲んだからと言って、完全に“治す”ことは出来ない。言い換えれば、本人の“個性”が無くなってしまう訳ではない」とのこと。

 よって、我々の眼から見ると目覚ましい躍進でも、あくまでも本人 比。集団の中で持てる力を余すことなく発揮できるかどうかは、また別の話なのだ。結局、一般クラスで2学期を過ごしたものの、補助の先生が付きっ切り状態だった、と知らされたのは、もうすぐ冬休みを迎えようという頃だった・・・。

 

(つづく)